2008年08月04日

『ヒトラーの贋札』を観る(2/13)

【あらすじ】
 第二次世界大戦直後のモナコ。一流ホテルにみずぼらしいスーツの男が入ってくる。手には札束の詰まったスーツケース、腕には強制収容所の囚人番号の刺青。

 1936年、サロモン・ソロヴィッチ(サリー)は秀でた芸術的才能を利用し、パスポートや紙幣などあらゆる偽造を行う贋作師だ。捕まらない為、同じ場所に長く滞在はしない彼だが、女の色香に惑わされ出発を一日遅らせた為、犯罪捜査局の捜査官ヘルツォークに捕らえてしまう。

 サリーはマウトハウゼン強制収容所に送られた。ここでは囚人達が次々と組織的に殺されていく。囚われているのは皆ユダヤ人だった。ナチスによるホロコーストが始まっていたのである。
地獄のような日々の中、息抜きに描いたスケッチがナチス親衛隊の隊長に気に入られ、サリーは彼らの肖像画やプロパガンダの壁画を描く事で生き延びるが、ある日ザクセンハウゼン強制収容所への移送が言い渡される。死を覚悟した彼を待っていたのは、彼を捕らえたヘルツォークだった。

 ヘルツォークは「ベルンハルト作戦」の指揮官となっていた。「ベルンハルト作戦」とは贋ポンド紙幣を大量に流通させイギリス経済を混乱に陥れるという極秘作戦である。サリーは卓越した偽造の腕を見込まれ移送されてきたのだった‥‥
(オフィシャルサイトはこちら


【監督】ステファン・ルツォヴィッキー
【出演】カール・マルコヴィクス アウグスト・ディール
    デーヴィト・シュトリーゾフ


【評点】80点
 ナチスの贋札偽造作戦に従事させられるユダヤ人の葛藤を丁寧に描いた作品です。

 「ベルンハルト作戦」に従事させられているユダヤ人達は優遇されています。といっても、最低限の普通の生活をしているだけなのですが。
(彼らの環境を良くする為に娯楽用具と称して卓球台が与えられるエピソードが象徴的)
しかし、他のユダヤ人達が文字通り「壁一枚隔てた隣」で虫けらの如く殺されていく事。

また、

この作戦が成功する事
  ↓
ナチスの延命
  ↓
ユダヤ人(同胞)の虐殺が続く

という図式。

反面、ナチスの命令に従わなければ、他のユダヤ人と同様に虐殺されてしまうという事実。
これらの事から目を背ける事が出来る訳がなく、主人公をはじめ作戦に従事させられている人達は常に後ろめたい気持ちを抱いています。

 しかし、主人公達の葛藤はこれだけではなく、サリーは、別の葛藤や虚無感に苦しんでいきます。
この作戦に従事する前、主人公のサリーは自分の事しか考えない様な人間でした。そんな彼がこれらの葛藤に苦しむ訳ですから、いかに過酷な極限状況なのかが解ります。

 また、偽造メンバーの一人がナチスに協力する事を拒否するのですが、普段なら高潔に写るであろうその行動が、極限状況であるが故にただのエゴにしか見えないというシーンが虚無感を増幅させ、その虚無感が全てが終わった後に訪れるラストのダンスシーンに集約される。秀逸です。

 派手さはありませんが、今年のアカデミー賞(外国語映画賞)を受賞したのも納得の作品です。
posted by TARGET at 22:51| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 「ヒトラーの贋札 」★★★☆wowowにて カール・マルコヴィックス 、アウグスト・ディール 、デーヴィト・シュトリーゾフ 主演 ステファン・ルツォヴィツキー 監督、2007年、96分 ..
Weblog: soramove
Tracked: 2009-03-11 19:19
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