2008年06月05日

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を観る(5/14)

【あらすじ】
 一攫千金を夢見る山師ダニエル・プレインヴューは、一匹狼の鉱山労働者として鉱山や石油の採掘を行っている。

 ある日、ある青年から「故郷の牧場の地下に石油が眠っている」との情報を手に入れた彼は、息子H.W.と仕事のパートナーとしてフレッチャーを伴い、アメリカ西部の集落リトル・ボストンへ赴く。作物は育たず、娯楽にも乏しく、砂塵が舞い、見渡す限りの荒野が続くこの集落に現れたプレインヴューは、安価に土地を買い占めていく。手に入れた砂漠に、木製の油井やぐらを建造し採掘を始めた彼は、見事に石油を掘り当て、莫大な財産を手中におさめ、辺境の地に繁栄をもたらしていく。

 一方、その地に暮らすイーライ・サンデーは、狂信的とも言える聖霊派教会の若き牧師。土地を売る時に約束していた自らの教会への約束を守らないばかりか、(彼にとって)不信心な態度をとり続けるプレインヴューを、疎ましく思っている。しかし、彼もまた石油のもたらすであろう富を自らの野心の為に利用しようとしている一人だった‥‥
(オフィシャルサイトはこちら

【原作】アプトン・シンクレア
【監督】ポール・トーマス・アンダーソン
【出演】
  
 ダニエル・デイ=ルイス

 ポール・ダノ ディロン・フレイジャー

【評点】90点
 とにかく、ダニエル・デイ=ルイスの演技に圧倒されてしまう。「うまい」とか「存在感がある」というレベルの話ではない。

 文字通り圧倒されるのだ。

 一番解りやすいのが冒頭部だろう。

縦坑で金を採掘するプレインヴュー。地上に出ようと縦坑のハシゴを昇るプレインヴュー。
しかし、地上に出る前に落下し縦坑の底に叩きつけられてしまう。なんとか地上に出るプレインヴュー。

地上ではいずるその姿に、私の目はくぎづけになった。

 足を骨折している様が即座に解る。しかも、演技じゃなく本当に骨折しているとか思えない。
万事がこの調子である。圧倒されない方がおかしい。
監督が「彼なくしてこの作品は成立しない」と言ったのも、アカデミー主演男優賞を取ったのも、当然である。
(しかも、この人最初の絶頂期に俳優辞めて靴屋の修業していたところをスコセッシに口説かれて『ギャング・オブ・ニューヨーク』で復帰。その演技が絶賛されたっていうんだから‥‥、天才っているもんだねぇ)

 作品の内容についてだが、観る人によって違う切り口が見えてくるのではないか、と思わせる程、様々な要素を内包している。
その全てを語る事は、私には出来ない。なので、私が最も感じた事、『欲と偽善』について書こうと思う。

 主人公のダニエル・プレインヴューは「自らの欲に正直な人」である。自らの欲を満たす為には手段を選ばない。しかし、彼は偽善者ではない。何故なら、彼は常に自らの欲を剥き出しにしているのだから。

 一方、イーライ・サンデーは「偽善者」である。心の底にある欲を押し込め、「良き行いを実践する聖職者」を演じ、「宗教」という大義名分で他者を自分の思いのままに扇動する。

 プレインヴューがイーライに対して敵意を剥き出しにするのは、イーライが「偽善者」であるという事を見抜いていたからである。
何故なら自分に近付く人間のほとんどが「自らの欲に正直な人」と「偽善者」のニ種類であり、それらが何たるかを知っており、なおかつ自らにも「偽善者」の要素を内包している事に気付いている。そして、その事を嫌悪しているからである。
(実際、イーライの「偽善者」振りは傍観者である筈の私にとっても虫酸が走るものだった。ボール・ダノの演技も素晴らしい)

 ラストシーン、メッキの剥がれたイーライを罵倒するプレインヴューの姿は、自らが内包する「偽善者」に対して高らかに勝利宣言をしている様にも見える。

 他方、H.W.に対してプレインヴューは「ビジネスの為」とことさら「偽善者」を演じようとしている。しかし、演じきれない。その理由が「偽善者」への嫌悪感なのか、生まれた時から孤独なH.W.に対する共感なのか、はたまた親子の愛情なのかは解らない。しかし、イーライに向かって高らかに勝利宣言した後の虚脱したプレインヴューの姿に彼にとってのH.W.の存在の大きさを見るのは私だけだろうか。

 私の文章力が拙い為に、この作品の良さを、ほとんど伝えられなくて申し訳ない。
しかし、2時間40分の長い上映時間全く退屈しないし、観た人それぞれに感じるものがあるだろう。

 断言する。

 傑作である。
posted by TARGET at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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